大晦日、寒空の下で。

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 俺には理解しがたいな、やっぱり。
 神社の行列に並びながら俺はため息をついた。白く流れていくため息がはっきりと確認できるほど、今日の寒さは厳しい。何でも近年稀にみる寒波が日本列島を横断中なのだとか……お天気のお姉さんの言葉を借りただけだから、詳しいことは解らないけれども。
 それはともかく、何でこんなくそ寒い中、初詣なんて来なければならないのだろうか。いや、冬なのだから寒いのは妥協しよう。だけど、こんな大晦日の夜中、大行列に並ぶ必要は果たしてあるのだろうか? 確かに長い行列を潜り抜けた後の方が、空いている中楽しようとするよりは神様も苦労を労って願いをかなえやすくしてくれるかも知れないけれども。
 だが、後々願いがかなったとしても今寒さで風邪とか引くのは御免こうむりたい。さしもの神様も風邪のウイルスまでは退治できまい。現に、既に鼻を噛み過ぎて鼻の下がヒリヒリしている。別に冷え性じゃないのに、時折震えが来るし、もう手袋も余りの寒さに意味を成さなくなってきている。
 コタツに入って年越しそばすすりながら、紅白みるのが正しい年越しのスタイルだ。日本人の心だ。今、改めてそう思う。
 だったら、何でお前は大晦日の混雑しまくっている神社の大行列にわざわざ並んでいるんだよ。お前も、同じ穴の狢じゃないか。と突っ込まれることだろう。それはもっともである。通常ならば、俺は絶対こんなところにはこない。それが今年、このような状況に立っているのは、俺のそういった姿勢を覆す程の理由があったからに他ならない。
「お待たせー。凄い混んでたから時間かかっちゃった」
 嫁さんが両手に甘酒を持って戻ってきた。ほほは寒さのせいでりんごのようにほほを赤くして。でも、心の中で愚痴ている俺とは正反対に彼女は寒い中でもにっこりと微笑んでいる。俺が自らを思わず恥じてしまうくらいには。
「ごめんねー、無理いって。寒いでしょ」
「……ま、ちょっとはな」
 本当はめちゃくちゃ寒いんだけどな。渡された甘酒のカップの温かさが、凄い身に染みる。いや、手元だけだからこの表現はおかしいかも知れないが。
「でも、私ね。結婚したら旦那さんと一緒にこうやって初詣の行列に並んでみたかったんだー」
 正直言えば、俺は結婚したら嫁さんの作った年越しそばをコタツで食べて、「ゆく年くる年」みながらのんびり、でも幸せと温かさをかみ締めながら年明けを迎えるのが理想だったしたのだが。
 ……こうやって笑顔で大好きな嫁さんが、話しているのを聞いて反論できるか? いや、出来ないね。その証拠に、俺は彼女の台詞を聞いて、まあ寒くてもこういう年越しも記憶に残っていいかもね、と思い始めている。
 愛って凄い。幸せって凄い。ああ、もう風邪引いてもいいや。
「あ、もう12時過ぎてるね」
 もう一度。否、今度は満面の笑みを零しながら、彼女が言う。
「明けましておめでとう。今年もよろしくね」
「うん、よろしく」
 来年も再来年も、末永く一緒に。

END


あとがき
 大晦日の午後に突然思い立った年賀小説です(笑)
 紅白見ながら書いて、矢沢さん歌っている辺りで書きあがりました。
 故に推敲は全くしておりませんので、あらが多いかと思いますが、まあ一応まとまった話にはなったかなあ、と(汗)
 とりあえず年賀状と兼ねておりますので、この作品は転載可です。  したいと思う人がいるかどうかは疑問ですが(汗)
 その場合は、掲載後に報告して頂ければ、と思います。(※配布は終了しました)

 2010年も「満月未満」をよろしくお願いします。

 2010.1.1 月島瑠奈拝
 原稿用紙換算枚数:4枚
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